365日の記念日

他のアプリへのエクスポート機能を追加しました!

どうもみなさんこんにちは! ハヤえもん開発者のりょーたです。

今回のアップデートでは、ハヤえもんから他のアプリに音声ファイルをエクスポートできるようにしました。

再生速度や音程、イコライザなどが変更されている場合でももちろんエフェクトがかかった状態でエクスポートされます。

また、ABループ中であればループ中の範囲のみがエクスポートされます。

この機能を使って、ぜひぜひシェアしてみてくださいね。

開発後記

こないだパソコンのデスクトップがアイコンで埋め尽くされていたので、ファイルの整理をしてたんですね。

で、良く分からない「365.txt」というテキストファイルがあったので普通にそのまま消そうと思ったんですけど、なんかちょっと心に引っ掛かるものがあったんですね。

で、開いてみたところ、ぼくが昔書いた小説でした。

タイトルは『365日の記念日』。

皆さん全然興味ないと思いますが、せっかく出てきたファイルですし、このまま消してしまうのももったいないので、ここに載せておきますね。

「なんでアップデート履歴に小説載せるの!?」って気持ちはどうかグッとこらえてください。

365日の記念日

ねぇ、お父さん。

お父さんがいなかったらあたしの人生はどうにもならなかったと思う。

お父さん、覚えてるかな。あたしがまだ小さい頃、お父さんが急に言い出したの。

「正美。人生は退屈だ」

あたし、びっくりしたよ。

そんなこと言う父親、なかなかいないもん。

だから、あたしは思わず、「そっかぁ……」って落ちこんじゃったんだ。

でも、その話には続きがあったんだよね。

「正美。人生は本当に退屈なんだ。楽しいことが自然におこるなんてまず無い。だからこそ、な。正美。だからこそ、人生ってのは自分自身で楽しくしていかなくてはいけない」

小さなあたしには、お父さんが何を言ってるのか、理解することができなかったよ。

それでも、お父さんが何か、大切なことを伝えようとしてることだけは何となく分かったんだ。

そして、お父さんはこう言ったよね。

「な、正美。記念日って知ってるか?」

「記念日? 結婚記念日とか」

あれは、お母さんを事故で亡くしたばっかりの頃だったよね。

「そうだ。俺たち2人には記念日と呼べるような日がほとんどない」

悲しい顔をしたあたしに、お父さんは優しくこう言ったよね。

「だから、これから2人で、たくさんの記念日を作っていくんだ」

記念日を作っていく……。

それが、何となく楽しそうだってことは小さなあたしにでも分かった。

「正美。お父さん、計算したんだ」

「けいさん?」

「1年で25個ずつ記念日を作っていったとするだろ? そしたら、15年で365日すべてが記念日になるんだ」

お父さんの考えは今思うと、かなり斬新だったと思うよ。

そしてお父さんは無邪気な笑顔で笑いながらこう言ったよね。

「どうだ、正美。すごいだろう? そしたら毎日が記念日だ。な、正美。すごいだろう?」


あたし、嬉しくて。

お父さんの気持ち、痛いぐらいに良く分かったから。

お母さんを亡くして、落ちこんでるあたしを励まそうとしてくれた。

希望を持たせようとしてくれた。

それが、嬉しくて嬉しくて。

あたし達、馬鹿みたいに笑ったよね。

そして、馬鹿みたいに泣いたよね。

お父さんもきっと、つらかったんだよね。

苦しかったんだよね。

若い頃のお父さんとお母さんの写真。

あんなに仲良しだったんだもんね。

あんなに大好きだったんだもんね。


あの事故さえ無かったら……。

何度そんなことを考えたんだろうね。

それでも、お父さんは、相手の運転手を責めようとはしなかったよね。

相手の方が悪かったのに、それなのに責めようとはしなかったよね。

ただ、一言、こう言ったんだよね。

「これから二度と運転をするなとは言わない。ただ、二度と同じ過ちを繰り返さないでほしい。君は俺の妻の命を奪った。俺と妻と娘、家族3人の幸せな未来を奪った。その重みを理解してほしい」

ねぇ、お父さん。

あの運転手、今頃どうしてるかな。

きっと毎日、安全運転してるよね。

きっと、もう事故なんておこしてないよね。

お父さんはきっと、分かってたんだよね。

あの運転手をどれだけ責めたとしても、お母さんがかえってくるわけじゃないってこと。


それからは、ありとあらゆることを記念日にしたよね。

お父さんが初めて料理をした日。

味のないカレー。

あれは、まずかったよね。

ちゃんと色はついてるのになんの味もしなかったもんね。

「こんなことになるなら、母さんに料理教わっとくんだった……」

そう言いながら、また2人で泣いたよね。

そしてあたしは、お父さんに言ったんだ。

「お父さん! 今日はお父さんが初めて料理をした記念日ね!」


あたしが初めて、お皿の洗い方を覚えた日。

あの時は、ごめんね。

大事なお皿、割っちゃったもんね。

それでもお父さんは、こう言ってくれたよね。

「正美。失敗は成功のもと、だぞ」

「失敗は成功のもと?」

「そうだ。誰だって失敗はする。しかし、その失敗を悔やむんじゃなく、その失敗から何かを学びとることで、人は大きく成長することができるんだ」

お父さん。

あのお皿、結婚して初めてお母さんと暮らし始めた時に、お母さんと一緒に選んだお皿なんだよね。

あの時は本当にごめんね。

それでもお父さんは、こう言ってくれたよね。

「な、正美。今日は初めて正美が皿洗いを覚えた日だ」


2人で初めて、動物園に行った日。

お父さん、ゴリラの真似してくれたよね。

そんなキャラでも無いくせにさ。

でも、嬉しかったよ。


お父さん。あの頃は、とにかく一生懸命だったよね。

2人だけの生活に早く慣れようと、一生懸命だった。

絶望の中から楽しみを見つけ出そうと、一生懸命だったよね。


初めて2人で喧嘩をした日。

お父さんの帰りが遅くて不安なあたしは、とにかくグズってた。

そんなあたしに対してもお父さんは、ただひたすら謝ってくれたんだよね。

「ごめんな。正美、ごめんな」

それなのにあたしは、ひどい言葉をお父さんに投げかけた。

「お母さんがいれば、こんなことにはならなかった!」

それを聞いたお父さんは、大声をあげて怒ったんだよね。

「もう母さんは帰ってこない! 俺だって精一杯頑張ってんだ!」


お父さん、ごめんね。

あたし、馬鹿だから。

ごめんね。

あの時はまだ、お父さんがどれだけ頑張ってくれてたのが、分かってなかったんだよ。

「お父さんなんて、大っ嫌い!」

その日、あたし達は一言も口をきかなかった。

翌朝、お腹の空いたあたしにお父さんは、トーストを持ってきてくれたよね。

そして優しく、こう言ってくれた。

「正美、昨日はごめんな。怒鳴ったりして。お父さん、正美が不安にならないように、なるべく早く帰ってくるから、な?」

その時食べたガーリックトースト。

その味が忘れられなくて、あたしの大好物はガーリックトーストになったんだよ。

「お父さん」

「うん?」

「あたしの方こそ、ごめんね」

「あぁ。2人で少しずつ成長していこうな」


お父さん。

あの時は、ありがとうね。

本当は、あたしの方から謝らないといけなかったのに。

本当に、ありがとうね。

「ねぇ、お父さん!」

「何だ?」

「昨日はあたしとお父さんが初めて喧嘩をした日。そして今日は、2人が初めて仲直りをした日ね!」

「はは、いっきに2日も稼いじゃったな」

そう言って、また2人で笑ったよね。


お父さんは、1人2役をこなそうとしてくれてたんだよね。

たった1人で、お父さん役とお母さん役を、両方果たそうと一生懸命になってくれてたんだよね。


初めて2人で外食をした日。

なかなか会話が見つからなくて、微妙な空気が流れた……。

お父さんは、お子様ランチについてきたおもちゃを指して、「良かったなぁ。正美、良かったなぁ」って、そればっかり繰り返してたよね。

あの時は何だか恥ずかしかったよ。


お父さんが初めてプレゼントをしてくれた日。

お父さんは、「これで一緒に遊ぼう」って、テレビゲームをプレゼントしてくれたよね。

それなのにすごい下手くそで、負けると本気で悔しがってたよね。

「さて、本気出すか!」って、そればっかり言ってたよね。


ぜんぶ、ぜんぶ、懐かしい思い出。たくさんの壁にぶつかりながら、たくさんの思い出を2人で作ったよね。


あたしが反抗期を迎えて、お父さんのことを「クソジジイ」って呼んだ時も、お父さんは笑って、こう言ったよね。

「わははっ、今日はクソジジイ記念日だ!」


それから、今日までに、364日もの記念日を数えてきたんだね。

お父さん。

ついに、365日の記念日だよ。


最後の記念日は、あたしの結婚記念日。

お父さんとお母さんの結婚記念日と、同じ日。


お父さん。

あたしにとってお父さんは、強くて、優しくて、カッコ良くて、最高のお父さんだよ。


お父さん。

いつまでも、いつまでも、大好きだよ。

だからこれからも、仲良し親子でいようね。


ねぇ、お父さん。すごいでしょう?

これからは、毎日が記念日だよ。


……最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、Enjoy “Your” Music with Hayaemon!!

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