一
「ねぇ、美沙。今日カラオケ行かない?」
「いや、あたしカラオケ苦手なの知っとるやろ!」
ーーキツい。
カラオケの苦手な女子高生ほどキツいものは無い。
神様はどうしてあたしに音感というものをくれなかったんだろう?
クソッ。
神め。
オーマイゴッド。
ドゥーユーハブアゴッド?
オーノー。
アイドンハブアゴッド。
プリーズ。
プリーズギブミーアゴッド。
プリーズギブミー音感。
ギブミーミュージックセンス。
ミュージックセンスが欲しいよぅ。
どうしてあたしにはミュージックセンスが無いの?
どうしてどうしてどうして?
父親はドラム、母親はギターを仕事にしてる。
詳しくは知らないけど、バンドで出会って恋に落ちたらしい。
親同士の恋愛なんてどうだっていいけど、おかしくない?
なんであたしに音感が遺伝せんかった?
どうした?
どうした、あたしのDNA?
どうでもいいけど、DNAってそのまま読むとドゥナって読めるね。
どうした、あたしのドゥナ?
「ドゥナー!」
「あたしのドゥナー!」
いかん。
あたし、どうかしてる。
なんか今、叫んでた気がする。
ここ、外じゃん。
帰宅途中じゃん。
あたし、何叫んでんだろう。
やばい。
クレイジーすぎるよ。
あたし、クレイジーすぎるよ。
おクレイジーが、過ぎますわよ。
そもそも、ドゥナって何?
ドゥナって何?
何なの?
あたし、なんか叫んでた。
なんか、2回ぐらい叫んでた。
ドゥナって、叫んでた。
やばい。
クレイジーだよ。
おクレイジーだよ。
誰かに聞かれてなかったかな?
そう思って振り向いてみた。
そこには、誰も、いなかった。