今夜、ぼくは娘に手紙を書きます。

 こないだ会社で打合せをしていたところ、胸ポケットからクシャクシャの紙が出てきたんですね。

『なんだろう?』と思って広げてみると、それは5歳になったばかりの娘からの手紙でした。

 そこには、『おとったんへ つくえにけえきおいてあるからたべてね』と書かれていました。

 打合せ中だったこともあり、照れくさくなってもう一度胸ポケットにしまおうとしたところ、打合せ相手から「そういう手紙、ちゃんと返事書いてます?」と訊かれました。

 え?

 返事?

 おぉ、返事か。

 やばい。

 やばいぞ。

 返事だ。

 そっか。

 手紙をもらったら普通、返事を書くよな。

 確かに確かに。

 ほうほう。

 返事ね。

 うん、やべぇ。

 やばすぎる。

 今まで何十通も娘から手紙をもらってきたけど、ぼくは一度たりとも返事を返していない。

 それなのに娘はずっと手紙をくれている。

 これはやばい。

 健気すぎる。

 かわいそうだ。

 何の返事もないのに、手紙を送り続ける娘。

 これでは、ファンレターと同じではないか。

 娘が父親に送る手紙がファンレターと同じではないか。やばい。

 やばすぎる。

 ごめん。

 本当にごめん。

 アホな父親でごめん。

 ごめんなさい。

 今夜、ぼくは娘に手紙を書きます。

「ムスメへ いつも てがみをくれて ありがとう そして いままで いちどもへんじをかいてなくて ごめんね いつもいつも てがみをもらって うれしくおもってるよ ひらがなをかくのが どんどん どんどん じょうずになってるね これからも たくさん てがみをくれたら うれしいな おとったんより」

 いやぁ、ぼくはまだまだ未熟です。

 未熟なのです。

「娘と保護者」という関係になってしまい、結果として娘との人間関係を適当にやり過ごしてしまっていた。

 いやぁ、反省反省。

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